お醤油を作る事にしたのはいいんだけど、僕、一人で火を使っちゃダメって言われてるでしょ?
でもお醤油を作るにはどうしても火を使わなくちゃいけないから、お母さんに手伝ってもらう事にしたんだ。
「それでルディーン、そのお醤油ってのを作る材料は全部そろってるの?」
「えっとね、大豆は買って来たからあるでしょ? それにお塩とお水はあるし、後は……あっ、そうだ! お母さん、粉にする前の小麦ってある?」
そう言えば小麦粉は入ってるツボがどこにあるか知ってるけど、粉にする前の小麦がお家にあるかどうかなんて知らないもん。
だからお母さんにある? って聞いたら、お母さんは不思議そうなお顔でこう聞き返してきたんだ。
「ええ。小麦はうちの畑でも作ってるから当然あるけど、どうするの? 粒のままだと美味しくないわよ?」
「おいしくないの?」
「ええ。周りの皮がとっても硬いし、その皮が実に食い込むような形でついているから剥くく事も出来ないのよ」
僕が粒のまんまの小麦ってうちにある? って聞いたらね、お母さんは不思議そうなお顔で粒のまんまだと美味しくないよって言ってきたんだ。
そう言えば僕も小麦、そのまんまで食べた事無かったっけ。
でもさ、僕は粒のまんまの小麦を食べたいんじゃなくって、お醤油を作るのに使いだけでしょ?
だから美味しくなくったって大丈夫だよって、お母さんに教えてあげたんだ。
「ああ、そう言えばそんな話だったわね。解ったわ。裏の倉庫に置いてあるから、持ってくるわ」
「ありがとう。じゃあ僕、先に大豆を洗っとくね」
小麦を取りに行ってくれるお母さんに行ってらっしゃいした僕は、イーノックカウから買って来た大豆をおっきなボウルに入れて、その中にお水を入れたんだよ。
この大豆、とってもきれいだからほんとは洗ったりしなくってもいいのかもしれないけど、こうしとけばちょっとだけでもお水を吸ってくれるでしょ?
そしたら火を入れた時に、中までしっかりと柔らかくなってくれるかもしれないもんね。
「ルディーン小麦を持ってきたわよ。これはどうしたらいいの?」
「あのね、こないだ大豆を粉にした時みたいに煎って欲しいんだけど、それよりも先にこっちの大豆をやんないとダメなんだ」
お醤油を作る時はね、この大豆を蒸して柔らかくしないとダメなんだって。
でも大豆って、とっても硬いでしょ?
だからすっごく時間がかかっちゃうから、先にこっちをやんないとダメなんだよ。
って事で、お母さんにはお水を沸かしてもらって、僕はその間に、昨日作っておいた秘密兵器を作業部屋に取りに行ったんだ。
「ルディーン。これは何に使う物なの? そこに穴がいっぱい空いている鍋なんて、何に使うのかお母さんには全然解らないのだけど」
「あのね、これはお水を沸かしたお鍋の上にのっけて使うんだよ。そしたらその穴から湯気がいっぱい入ってきて、中のものをあっつくしてくれるんだ」
僕が作ったのはね、銅を使って作った蒸し器なんだ。
前にお家で蒸すお料理を作ろうと思った時は水の入ったフライパンの中に石を入れて、その上に穴を空けた板をのっけただけのを使ったんだよね。
でも今回は大豆を蒸すから、網なんか使ったらコロコロって転がって板のから落ちちゃうかもしれないでしょ?
だから昨日のうちに蒸す専用の道具を作っといたんだ。
「なるほど。じゃあ、同じものが何個もあるのは?」
「湯気は下から上に上がってくでしょ? だからおんなじもんを積んでったら、一度にいっぱいお料理する事ができるんだよ」
今日は一個しか使わないけど、寒くなってきたら一度にいろんなものを蒸したいなぁって思うようになるかもしれないでしょ?
でも積み上げられるようにしとかなかったら、また最初っから作らないとダメだもん。
そんな事にならないようにって、僕は最初っから何段か積み上げられる蒸し器を作っといたんだ。
だってこうしとけば後からもっといっぱい蒸したいなぁって思っても、おんなじ蒸すとこを作ればいいからね。
と言う訳で、早速大豆を蒸し始めようと思ったんだけど、
「あら、下に穴が開いているっていうのは思ったより便利ね」
そしたらお母さんが、蒸し器の中にお水の入ったまんまの大豆をどばぁって入れちゃったもんだから、僕、びっくりしちゃったんだ。
でもそれを見たお母さんは、ちょっと不死来そうなお顔でこう聞いてきたんだよ。
「どうしたの、ルディーン。このお鍋、下に穴が開いているし、手で持つところも作ってあるから当然こうするものだと思ったんだけど……もしかしたらつけてあったお水も使うつもりだったのかしら?」
「ううん。お水は捨てるつもりだったけど、お水が入ったまんま入れちゃうなんて思わなかったからちょっとびっくりしただけ」
そう言えばこの蒸し器、下に穴が開いてるんだからお水ごと入れても全部下から落ちちゃうよね。
それにお母さん、僕よりレベルが高いからとっても力持ちでしょ?
だからお水がいっぱい入ってるボウルだって、片手でひょいって持ち上げられるもん。
それならもう片方の手で蒸し器を持って、その中にどばってい入れちゃったほうが楽ちんだよね。
「えっと、これをお湯を沸かした鍋の上にかければいいのね?」
「うん。ちゃんとはまるように作ってあるから、そのまんまのっけて」
蒸し器には取っ手が二つ付けてあるから、両手で持ってお鍋の上にまっすぐ乗せる事ができるんだよ。
それに大きさや形もうちにあるお鍋に合わせて作ったから、乗っけてもぐらつく事は無いんだ。
「後はこのふたをしたら、後はほっといても大丈夫だよ」
「あら、この蓋にも、小さな穴が一個空けてあるのね」
「うん。そうしとかないと蓋が外れちゃうもん」
お湯の入ったお鍋の上にのっけてると、段々中に湯気がたまってっちゃうでしょ?
そしたらその湯気で蓋が外れちゃうかもしれないから、穴は空けとかないとダメなんだよね。
「それに代わった形をしてるけど、これにも意味があるのよね?」
「うん。村のお風呂だって屋根がまぁるくなってるでしょ? あれとおんなじだよ」
この蒸し器の蓋はね、浅いボウルをひっくり返したみたいな形をしてるんだ。
だってそうしとかないと、ふたに着いた湯気がお水になった時に上からぽたぽた落ちてきちゃうもん。
村にあるお風呂だって、天井から湯気が落ちてきたら冷たっ! ってなっちゃうから、そうならないようにこんな形になってるんだよ。
だからそれを教えてあげると、お母さんはなるほどねぇって。
「村のお風呂の天井、だからあんな変わった形をしてたのね」
「お母さん、知らなかったの?」
「ええ。だってそんな事、今まで考えた事も無かったもの」
お母さんはそう言うとね、僕の頭をなでながらいろいろな事を知っていて偉いわねって笑ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
醤油を作るつもりが、蒸し器を作る話になってしまいましたw
まぁ、醤油を作るのにはかなりの工程が必要なので、初めから一話で出来上がるなんて思っていませんでしたけどね。
でもなぁ、このペースだと何話書かるんだろう? それだけがちょっと心配です。
さて、この頃続いている出張ですが、今週末もあります。
なのですみませんが月曜日の更新はお休みさせていただき、次回更新は来週の金曜日となります。
ただ、来週は今のところ出張はないとの事なので、その次の月曜日はちゃんと更新できると思います。
……本当に大丈夫だよな?